新道蒸溜所は昨年秋に生産開始となった、新しい蒸留所で、プランニングから設備一式を三宅製作所が手がけている。このところ見てきた埼玉の羽生や、静岡の井川などと、つくりや雰囲気がよく似ている。ワンバッチは1トンで、麦芽の搬入、粉砕、糖化、発酵、蒸留の順路にそって見学路も設けられていて、非常にクリーンで機能的だ。その順路にそって、すべて見せてもらうが、詳細は次号のガロアで(3月12日発売予定)。
篠崎は日本酒や焼酎、甘酒、リキュールなどを造ってきた会社で(昨年からはワインも…)、今回の新道蒸溜所は敷地約5000坪というから広大だ。朝倉にあるから朝倉蒸溜所でもよかったのではないかと聞くと、地元では新道といわれていたからだという。何に対して新道なのか聞いたら、旧日田街道に対して、新道なのだという。聞けば篠崎は筑後川上流部で林業もやっていて、日田とも関係が深いという。
もう1つ、篠崎は「高峰ウイスキー」というスピリッツをアメリカ市場限定で出していて、それについても話をうかがい、さらにテイスティングもさせてもらった。これも、いつかガロアでやりたいと思うが、高峰は高峰譲吉のことで、わが国、いやアメリカのウイスキー史では特異な人物としても知られる。譲吉は富山県の高岡市生まれ。父は加賀藩(石川金澤)のたしか御典医で、幼少の頃より天才といわれ、藩費で長崎留学を経験している。のちに生化学者、薬学者となり、麹を使った糖化、ウイスキー造りを提唱し、1890年にアメリカ・イリノイ州のピオリアに招かれている。麦芽を使った糖化ではなく、日本伝統の麹を使ったウイスキー造りの可能性を、アメリカで実証するためだった。
結局、麦芽製造業者の妨害にあい(命を狙われた)、それは失敗に終わったがタカジアスターゼなど多くの医薬品の特許を取り、医学・薬学に多大なる貢献を果たしている。その高峰が造ろうとした麹ウイスキーを再現したのが篠崎の「高峰ウイスキー」だ。日本では麹を使った糖化はウイスキーでは認められていないが、アメリカでは今でもOKなはず。ということでアメリカで販売されているのだが、文献を調べ、高峰と同じ黄麹を使って麦を糖化し、それを発酵させて、単式2回蒸留し、オーク樽で8年寝かせたのが高峰ウイスキーだ。糖化、発酵までは麦焼酎と同じ手法がとられている。使う大麦は、いわゆる丸麦(精麦)だ。
と、長々と書いてしまったが、味見をしても充分いける。世界的に麹が注目される今だったら、これはこれでアリだと思った。いずれにしろ、できたばかりの蒸留所だが、これからが実に楽しみだ。
で、この日はその後大分県・久住にある久住蒸溜所も取材。途中までは高速だったが、そこから久住連山の山道を延々上り下りし、1時間近くかかって久住に到達。津崎商事が昨年オープンした久住蒸溜所を訪れる。案内してくれたのは津崎の宇戸田さん。ウイスキートーク福岡や、秩父のフェスなどでも何度もお会いしていたが、まさかこんな所に蒸留所をつくるとは…という感じだった。ここの仕込みはワンバッチ500kgで、何もかもがコンパクト。1つ屋根の下にすべてが収まっている。スチルもマッシュタンもフォーサイスである。
これも次号のガロアだが、この日は日田に泊まる予定になっていたので、車で2時間かけて日田に戻りホテルにチェックイン。




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感染対策として、来週くらいからはテレワークを再び導入せざるを得ないかもしれないが、一番怖いのは濃厚接触者でウイ文研の事務所機能が止まることだ。一割減の労働態勢を考えてほしいと都知事は言っているが、一割どころでは済まないだろう。検定、コニサー、フェス、ガロア、TWSCとこの時期ウイ文研はフル稼働しているから、もしそうなったら損失ははかりしれない。すべての業務が止まる可能性もあるからだ。そのために、年明け4日からすべて前倒し、フルスロットで仕事を進めてきた。予定の1~2週間前倒しである。
10日の休日も検定の問題を作り、午後3時からウイ文研でマスターの論文判定会。Sさん、Nさん、Hさん、そして私の4人で7つの論文審査を行い、その様子を今回は録音して記録に残すことにした。近いうちにテープおこしをして、SNSなどで発信したいと考えている。いずれにしろ、今回の論文審査では7名中4名が合格し、次の2次試験へ進む権利を得たことになる
年末年始で読み進めていた論文審査と、ウイスキー検定の問題づくりが一段落したところで、昨日から再び『千夜一夜』第3巻の校正にかかっている。年末までに200話を書き終えたが、この2週間ほど新しいストーリーを書けていない。それより先に、第3巻、第4巻の発行を優先させることに決めたからだ。少なくとも第3巻は、3月下旬の東京フェスに間に合わせたいと思っている。
その東京フェスも、出展者が出揃い、その紹介をホームページ上で公開しているが、当日配られるパンフレット、そしてセミナー、入場券の発売開始と、やることが山積している。たった10数人のスタッフで、すべてをこなすことは至難のワザで、今年はスタッフも新規募集したいと思っている。そのためには、事務所の移転も考えないといけないのだが…。
いずれにしろ、オミクロンで先行きが不透明になっているので、日々、いや午前と午後でも、アクセルとブレーキの両方を使い分けている。今週末から予定していた九州取材は行うが、来週予定していた京都取材は、コロナによっては再び延期せざるを得ないかもしれない。一番のおそれは自分自身が感染することで、それだけは避けたいと思っているからだ。
と思っているところに、先週末、ガロアの30号が届いた。発売日は今日1月12日で、めでたく丸5年経ったことになる。今号も創刊5周年記念だが、ジャパニーズのクラフト15蒸留所を取り上げている。さらに編集長インタビューも計6編。非常に面白い話を聞くことができた。まだ海外取材は叶わないが、コロナが落ち着いたら、5月頃には3年ぶりにスコットランド取材を行いたい。もう少しの辛抱か…。


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